ニュージーランド交通局(NZTA Waka Kotahi)は、街頭のデジタル看板(ビルボード)などに設置されたカメラを活用し、不正な車検(Wof: Warrant of Fitness)を発行している整備工場を特定する試験運用を行い、大きな成果を上げました。しかし、限られた予算の優先順位を考慮した結果、このシステムの本格導入を見送り、現在は運用を一時停止していることが判明しました。
NZTAは、広告会社「LUMO」のデジタル看板に設置された自動ナンバープレート認識(ANPR)カメラや、市議会のCCTV映像システム「vGrid」を活用。例えば、「オークランドにある整備工場がWOFを発行したと記録されている日時に、その車が実際にはハミルトンを走っていた」といったデータの矛盾を自動的に検出し、車両検査を行わずに書類偽造だけでWOFを発行する「ペーパーWOF」の詐欺行為を暴く仕組みです。
ハミルトンを中心に行われた13件の不正調査において、このカメラシステムは捜査を大きく進展させる証拠を28回も捉え、その有効性が証明されました。
不正なWOFの発行は「深刻な安全リスクを招く」と報告書で指摘されているものの、NZTAは「限られた規制リソースを他の分野に優先的に配分するため」として、2025年半ばからこのシステムの利用を一時停止(ポーズ)しています。
ナンバープレート情報は個人の移動履歴に関わるため「個人情報」とみなされます。報告書では、一般市民への大量監視(マス・サーベイランス)にならないよう、また本来の目的以外に監視が広がる「ミッション・ドリフト(目的の逸脱)」が起きないよう、厳格な安全策(アクセス権の制限、データ保存期間の短縮など)が必要であると結論づけられていました。
自動車業界団体やモーター・トレード協会(MTA)はこのシステムへの支持を表明していましたが、今回のNZTAの判断により、ハイテク技術を駆使した不正取り締まりは一旦足踏み状態となりました。
