患者自身のT細胞を採取し、遺伝子操作でがん細胞を攻撃できるよう改変してから体内に戻す先端治療「CAR-T細胞療法」について、ニュージーランドのがん対策機関(Cancer Control Agency)は、公的医療制度への導入に向けた承認手順や枠組みを定める計画を近く公表すると明らかにした。ウェリントンのマラガン医学研究所が開発を主導し、2019年以降66人の患者に試験投与、2027年前半までに投与を完了し、その後は医薬品当局の承認と財源確保を目指す段階に進む。同治療は一部リンパ腫患者の約4割を治癒に導くとされる。
この治療が広く知られるきっかけとなったのは、俳優サー・サム・ニールさんの闘病だった。ニールさんは5年にわたりリンパ腫と闘い、化学療法が効かなくなった後、オーストラリアの臨床試験でCAR-T療法を受けてがんが消失。「NZに公的なCAR-Tへの道がないのは早急に変えるべきだ」と訴えていたが、7月に78歳で肺炎のため急逝した。家族は「がんのない状態で旅立てたことを幸せに思う」とコメントしている。
2018年に治療のため渡米し、翌年41歳で亡くなったカート・ブラントンさんの妻ジャネル・ブラントン・レニーさんは「絵空事のように感じていたが、明確な道筋ができるのは大きな前進」と歓迎。同研究所の試験で救われた詩人のミシェル・レゴットさんも「一日も早く日常的な治療になってほしい」と話した。NZでは年間のがん死者数が1万人を超えている。
