オランダの環境団体「Both ENDS(ボス・エンズ)」は、ニュージーランドがEUとの自由貿易協定(FTA)で約束した気候変動対策を守っていないとして、欧州委員会に苦情を申し立てた。EUの貿易協定に盛り込まれた持続可能性に関する約束の履行を市民社会が求める窓口「シングル・エントリー・ポイント」を使ったもので、環境・気候を理由とした申し立ては今回が初めてだという。RNZが報じた。
2024年5月1日に発効したNZ・EU間のFTAには、貿易や投資を促すために環境・労働法の保護水準を引き下げてはならないとする「後退禁止」条項や、パリ協定を効果的に実施する義務が盛り込まれている。締結当時のアーダーン首相は「環境や労働者の権利に関する画期的な約束」と評価していた。同団体は、現政権がメタン削減目標の緩和、農業部門の炭素価格制度からの除外、沖合の石油・ガス探査禁止の撤回、2億ドル規模のガス安全保障基金やLNG輸入施設の計画、大規模排出企業への気候訴訟を封じる法整備など、「一連の決定」によって気候対策を後退させたと主張。約8,400万トンの排出削減不足があり、海外での排出削減に44億〜50億ドルの費用がかかる可能性も指摘した。NZの団体は直接申し立てできないが、グリーンピースやンガーティ・プケンガ、ジェーン・ケルシー教授らが共同提案者として名を連ねている。
手続きは長期に及び、最悪の場合はEU市場へのアクセスを失う可能性もあるが、同団体は貿易上の優遇停止ではなく協定の順守を求めているとしている。昨年のNZとEUの往復貿易額は約215億ドルにのぼる。
これに対しトッド・マクレイ貿易相は「我々はEUとのFTAを順守している」と強調。国内団体が「外国勢力と組んでNZを攻撃する」ことは「非常に残念」で、輸出業者と雇用を損なうと批判した。そのうえで「どのように義務を果たすかを決めるのはNZの議会と政府であり、海外の国や団体、ロビー団体が指図することではない」と反論している。
