11月7日の総選挙に向けて議会が解散され、各党の選挙戦が本格化している。こうした中、争点として急浮上しているのが、MMP(小選挙区比例代表併用制)特有の「オーバーハング」を意図的に生み出そうとする分割投票の呼びかけだ。
オーバーハングとは、ある政党が小選挙区で獲得した議席数が、政党票に基づいて本来配分される議席数を上回った場合に、超過分の議席がそのまま認められ、定数120の議会が拡大する仕組み。1996年のMMP導入以降、これまで5回発生しており、2023年選挙後には史上最大の123議席の議会となった。
今回、玩具メーカー「Zuru」創業者で富豪のニック・モウブレイ氏らが、ウェブサイトを通じて「小選挙区では国民党候補に、政党票はACT党やNZファースト党に」と投票を分けるよう呼びかけている。モウブレイ氏は、こうした戦略的な分割投票を続ければ中道右派連立政権が「当面の間、政権を維持できる」と主張している。
これに対し労働党のクリス・ヒプキンス党首は「非常に裕福なニュージーランド人の一団が、自らの既得権益を守るために選挙制度を悪用しようとしている。まったくの不正行為だ」と強く批判した。モウブレイ氏は、一族の資産の大半は国外で築いたもので「既得権益」には当たらないと反論している。
一方、この戦略は国民党自身にも打撃となりかねない。Stuffの分析によると、現在の世論調査を前提にすると、比例名簿のみで立候補しているニコラ・ウィリス財務相や、クリス・ビショップ氏、ポール・ゴールドスミス法相、ジェリー・ブラウンリー議長ら有力議員が議席を失う可能性があるという。ジョン・キー元首相も分割投票を計画する国民党支持者に対して「見当違いだ」と苦言を呈しており、MMPの「抜け穴」を巡る議論は選挙戦の行方を左右しそうだ。
